リハビリ工法(亜硝酸リチウムを用いたコンクリート構造物の補修技術)
亜硝酸リチウムとは
亜硝酸リチウム(Lithium Nitrite;LiNO2)とはコンクリート補修用混和剤として開発された工業用化学製品であり、その原料は「ナフサ」と「リシア輝石」です。ナフサとは原油を蒸留して最初に出てくる物質で、粗製ガソリンとも呼ばれます。リシア輝石とはリチウムの原料となる希少鉱物です。亜硝酸リチウム(LiNO2)は、正の電荷を帯びたリチウムイオン(Li+)と、負の電荷を帯びた亜硝酸イオン(NO2-)とがイオン結合した物質で、水に溶けやすい性質を持っており、亜硝酸リチウム水溶液として製品化されています(図-1)。色は薄い黄色または青色の透明な水溶液です(図-2)。
亜硝酸リチウムの成分のうち、亜硝酸イオンは鉄筋表面の不動態被膜を再生する効果がありますので、塩害や中性化などの鉄筋腐食に起因する劣化の補修材料として適しています。一方、リチウムイオンはアルカリシリカゲルを非膨張化する効果がありますので、ASR 劣化の補修材料として適しています(図-3)。
浸透拡散型亜硝酸リチウム『プロコン40』
・プロコン40は塩害、中性化、アルカリシリカ反応(ASR)によって劣化したコンクリート構造物を効果的に補修するための高機能亜硝酸リチウムです。
・プロコン40は従来の亜硝酸リチウム製品に比べて、コンクリートの中で浸透性・拡散性に優れているため、内部圧入り工法やひび割れ注入工法に適しています。
浸透拡散型亜硝酸リチウムと従来の亜硝酸リチウム製品2 種類における浸透性能を確認するために、『JSCE-K571-2004「表面含浸材の試験方法(案)」6.3 透水量試験』に準拠した透水量試験が実施されています。透水量試験の状況と結果を図-2,図-3 に示します。この試験結果より,一定水圧作用下における各種亜硝酸リチウムのコンクリート中への浸透性能には差異が認められ、浸透拡散型のほうが従来品よりも25%程度向上していることがわかります。この試験は亜硝酸イオンやリチウムイオンのイオン拡散性ではなく、水溶液の状態でのコンクリート中の浸透を測定したものです。したがって,本試験の結果は、浸透拡散型亜硝酸リチウムが内部圧入工法やひび割れ注入工法など、圧力を作用させて使用する場合の施工において優位性を発揮することを示しているといえます。
浸透拡散型亜硝酸リチウム『プロコン40』を用いた塩害・中性化・ASR補修技術
亜硝酸リチウムを用いた補修工法の特徴
①ASRリチウム工法 | ②リハビリカプセル工法 | ③リハビリシリンダー工法 | |
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亜硝酸 リチウム 浸透範囲 | コンクリート全体 | コンクリート全体 | ひび割れ周辺 コンクリート表層部 |
劣 化 抑制効果 | ■コンクリート全体のASR膨張抑制 ■鉄筋防錆 | ■コンクリート全体のASR膨張抑制 ■鉄筋防錆 | ■劣化因子の遮断 コンクリート全体のASR膨張抑制 ■ひび割れ付近の鉄筋防錆 |
摘要 | ■再劣化を許容出来ないASR ■鉄筋腐食限界値を超えた塩害・中性化で、再劣化を許容できない構造物 | ■再劣化が許容できる ■塩害・中性化・ASRによる劣化 |
リハビリ断面修復工法
- 施工仕様
補修方法:左官工法・湿式吹付工法による断面修復
断面修復材:断面修復工法用亜硝酸リチウム40%水溶液「PSL-40」含有ポリマーセメントモルタル鉄筋防錆剤:『プロコンガードプライマー』(亜硝酸リチウム系表面含浸材)
施工手順
『リハビリペースト』(亜硝酸リチウム含有ポリマーペースト)1.コンクリートの脆弱な範囲を電動ピッック等ではつり取ります。 2.露出した鉄筋の表面をディスクサンダー等によりケレンし、入念に錆を落とします。 3.はつり面に『プロコンガードプライマー』を塗布する 4.鉄筋防錆材として『リハビリペースト』を鉄筋表面に塗布します。 5.『PSL-40』含有ポリマーセメントモルタルを用いて、左官工法にて断面修復します。(塩分量によって含有量を調整する。)
リハビリ被覆工法
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亜硝酸リチウムによる塩害・中性化・ASR抑制効果の付与!
従来の表面被覆工法の目的は、コンクリート表面から侵入してくる劣化因子を遮断することです。しかし、ポリマーセメントペースト系表面被覆材と亜硝酸リチウムを組み合わせることにより、表面被覆工本来の劣化因子遮断効果に加えて亜硝酸リチウムによる鉄筋腐食抑制効果及びASR膨張抑制効果をコンクリート表層部に付与することが出来ます。そのため、特に塩害、中性化、ASRの補修対策として適しています。
目的に応じた上塗りを選択により、耐久性の向上!補修目的に応じて、アクリルゴム、ポリマー系塗膜、高分子系浸透性防水材等を使い分けるることにより、構造物の耐久性を向上することができます。
施工仕様補修方法:左官工法・ローラーによる塗布
施工手順 標準仕様
被覆材:『リハビリペースト』・『モルタル』(亜硝酸リチウム含有ポリマーセメントペースト・モルタル(プロコン混和剤混入))
防錆剤:『プロコンガードプライマー』(亜硝酸リチウム系表面含浸材)。1.施工面を高圧洗浄またはディスクサンダー等により下地処理します。
2.コンクリート表面全体に『プロコンガードプライマー』を塗布します。(標準塗布量0.3kg/m²:塩分量によって塗布量を調整する。)
3.コンクリート表面全体に『リハビリペースト』・『モルタル』をコテまたはローラー、刷毛で塗布します。
4.高分子系浸透性防水材等を用いて上塗りを行い、『リハビリペースト』・『モルタル』層を保護します。
亜硝酸リチウムとケイ酸リチウムを併用した塩害・中性化・ASR補修技術
亜硝酸リチウム併用型表面含浸工法 プロコンガードシステム (NETIS:CG-150013-A)
プロコンガードシステムは、亜硝酸リチウムを主成分とする含浸材『プロコンガードプライマー』と、ケイ酸塩を主成分とする含浸材『プロコンガード』を組み合わせた亜硝酸リチウム併用型表面含浸工法です。従来の表面含浸材は主に劣化因子の侵入遮断を目的としており、その適用範囲は各劣化機構の潜伏期に相当する期間(塩害では塩化物イオン濃度が腐食発生限界未満、中性化では中性化残りが10mm以上、ASRではアルカリシリカゲル生成過程)とされています。プロコンガードシステム(亜硝酸リチウム併用型表面含浸工法)は、表面含浸工法本来の劣化因子の侵入遮断効果に加え、亜硝酸リチウムによる鉄筋防錆効果とアルカリシリカゲル膨張抑制効果を付加価値として備えています。したがって、対象構造物の劣化過程が潜伏期の段階だけでなく、既に鉄筋腐食やASR膨張が生じつつある進展期や加速期前期などの段階であっても、1歩踏み込んだ予防保全対策として適用することができます。プロコンガードシステムは他の表面含浸工法と同様にコンクリートの外観を変えることはありませんので、施工後の経過観察、モニタリング性に優れています。
施工手順
①下地処理
サンダーケレン及び高圧水洗い等でコンクリート表面の脆弱層や汚れを除去する。
②『プロコンガードプライマー』の塗布
刷毛及びローラー等で規定量(標準塗布量0.3kg/m²)を塗布する。必要に応じて湿潤養生をする。
③『プロコンガード』の塗布
刷毛およびローラー等で有効成分規定量(標準塗布量0.1㎏/m²)を塗布する。
期待される効果
○塩害補修:劣化因子(塩化物イオン)の侵入遮断+鉄筋腐食抑制(不働
態皮膜再生)
○中性化補修:劣化因子(二酸化炭素)の侵入遮断+鉄筋腐食抑制(不働
態皮膜再生)
○ASR補修:劣化因子(水分)の侵入遮断+ASR膨張抑制(ゲルの非膨張化)
プロコンガードシステムHP仕様について
本工法は条件(※)によって施工後に白化現象を生じることがあります。
白化現象を起こさない組み合わせとして以下のHP仕様もございます。
1層目:プロコンガードプライマー(亜硝酸リチウム系表面含浸材)
2層目:プロコンガードHP(高分子系浸透性表面保護材)
※例えば、断面修復材の表面層やPC部材など、密実度の高い部位に適用する場合、また亜硝酸リチウム内部圧入工法の施工後に適用する場合など。
※リハビリ工法の施工は、コンクリートメンテナンス協会の施工会員に限られます。弊社はコンクリートメンテナンス協会の正会員です。詳細については弊社へお問合せいただくかコンクリートメンテナンス協会WEBサイトをご覧ください。