AT工法(AT-P工法・AT-PD工法)
国土交通省[AT-P工法] NETIS登録番号QS-060003
巻立厚を極度に抑えて躯体断面の増加を低減、隣接構造物などの制約にも対応
工法概要
RC巻立て工法や従来PCM巻立て工法の補強部巻立て厚を極度に抑えた橋脚耐震補強工法です。
従来は既設橋脚躯体周囲に設置していた補強軸方向鉄筋を、躯体に施した溝切り部に埋設し、空隙部にエポキシ樹脂を充填して定着させた後、既設橋脚躯体表面に帯鉄筋を配置し、ひび割れ抑制のためビニロン繊維を混入したポリマーセメントモルタルを巻立てます。
AT工法概要図 (AT-P工法の例)
耐震補強工法のなかでも一般的な工法にコンクリート巻立て工法がありますが、補強による橋脚躯体断面の増加が大きくなることから、河川内や隣接構造物がある場合に適用できない場合があります。これに対して、鉄筋埋設式PCM巻立て補強工法(AT-P工法、AT-PD工法)は、既設のコンクリート表面に溝切りを施し、補強鉄筋を埋設することによって、巻立て増厚を大幅に低減した工法で、先に述べた様に構造上の制約がある場合でも適用の範囲が広がります。
正負交番載荷試験
- 補強部巻立て厚が大きくなるため、河積阻害率や建築限界等の構造寸法上の制限を満足できないという、RC巻立て工法が有する欠点を補うために、既設橋脚躯体に施した溝切り内に補強部軸方向鉄筋を埋設し、補強部巻立て厚を縮小した鉄筋埋設型PCM巻立て工法について、実際のRC橋脚を想定した供試体を用いた正負交番載荷試験を九州大学において実施し、補強効果の実験的検証を行った。
橋脚型供試体を用いた正負交番載荷試験では、従来の外付け配置型PCM巻き立て工法と同等の補強効果を確認し、また埋設主鉄筋の拘束効果による主鉄筋の座屈・はらみ出しを抑制した結果が得られました。(参考文献:構造工学論文集2005.3)
柱下部の曲げひび割れが柱下部で分散する減少が確認されました。これは従来工法(外付け配置型)では柱下部に集中した鉄筋の座屈等の破壊が、本工法では基部よりも上部に分散し、塑性ヒンジの形成が抑制されたと言えます。その結果、荷重変履歴曲線にも顕れたように、塑性ヒンジに起因する脆性的な破壊が遅延され、比較的じん性が向上したと推測されます。
施工手順
- ①表面処理工
- ディスクグラインダや、ウォータージェットなどによりコンクリート表面の付着物や脆弱部分を取り除く。
- ②コアスペース切削工
- コアドリルをセットするスペースを確保するため既設コンクリートを一部切削する。
- ③コア削工
- ベース部分に鉄筋を定着させるためのコア削工を施す。
- ④埋設溝削工
- 既設のコンクリート表面に、ディスクグラインダー等で軸方向の溝切りを施す。
- ⑤鉄筋埋設定着工
- 軸方向に施した溝に補強鉄筋を埋設、空隙部にエポキシ樹脂等を充填して定着させる。
- ⑥帯鉄筋取付工
- 帯鉄筋を取り付ける。端部は重ねてフレア溶接にて接続する。
- ⑦保護被覆工
- ひび割れ抑制のためビニロン繊維を混入したポリマーセメントモルタルを巻き立てる。
- ⑧仕上材塗布工
- 美観と表面保護を兼ねて仕上げ材を塗布する。
AT-PD工法
AT―PD工法は、AT-P工法をRC橋脚の段落し部のみの補強工法として適用したものです。 段落し部補強必要範囲に切削溝を設け、補強鉄筋を埋設定着した後帯鉄筋を配置してポリマーセメントモルタルで巻立てる工法です。
- 施工手順
- AT―P工法に準じる(②~③の工程を除く)
河川構造物への適用と広がり
河川構造物特有の「戸当り」を有する壁構造を考慮した部分巻立てが可能で、水門・樋門・放流渠・ダムピアなどへの適用実績が増加傾向にあります。
●水門(門柱・堰柱・底版)、ダムピア
●BOXカルバート・樋管・放流渠
●トピック
- 通常の基部へのアンカー定着で、形状・構造上から定着できない問題がありました。
埋設溝定着を通常アンカー定着長の1.5倍にすることで、埋設溝定着(3面定着)でも通常アンカー定着と同等の安全性であることを九州大学との共同実験において立証しました。
※AT工法の施工は、AT工法研究会の会員に限られます。弊社はAT工法研究会の正会員です。詳細は弊社へお問い合わせください。